フランス語

📚ハドリアヌス帝の回想19ー パンテオン

ローマのパンテオンを現在残るかたちに再建したのはハドリアヌス帝です。紀元後120年前後10年ほどの間にかけてのこと、皇帝は治世の業績を重ね、《国父》の尊称にも値するようになった充実した時期でした。 しだいしだいに、あらゆる神々はひとつの《全体》…

📚ハドリアヌス帝の回想18ー 美しいこの世

愛する美少年とともに過ごし幸せの絶頂期にあった皇帝。 わたしはといえば、あらゆる悪にもかかわらず美しいものに見え、思考や接触や観照においてすら最後の可能性まではなかなかくみ尽くせぬこの世を、人が進んで捨て去るということが理解しがたかった。 P…

📚ハドリアヌス帝の回想17ー 遠い幸福

人生の幸福な時期についてのハドリアヌス帝の回想。 静謐の季節、わが生涯の夏至…遠い幸福の日々を美化するどころか、わたしはその映像を色褪せたものにしてしまいたい気持ちと戦わなければならない。というのは、いまではその思い出すらもわたしには強烈す…

📚ハドリアヌス帝の回想16ー 黄金時代

ニコメディアで出会ったギリシア人の美青年アンティノウスに皇帝は心を奪われました。文学的な集いの夕べで出会ってから、まもなく親しい仲となり、その後あらゆる旅行を共にすることとなります。ハドリアヌス帝はアンティノウスに心酔し、満ち足りた情熱の…

📚ハドリアヌス帝の回想15ー エレウシスの秘儀

ハドリアヌス帝はたびたび伝統的宗教に接し、その理論・哲学にはかなりの興味を抱いていたと思われます。パルティアにオスロエス一世を訪問した際は、インド人のバラモンが生きながら身を焼きほろぼす儀式に立会い、神または神なるものに思考を重ねつつ、や…

📚ハドリアヌス帝の回想14ー 星空

ハドリアヌス帝の祖父マルリヌスは星占いを信じており、誕生時の星位から自分の孫が世界を支配するであろうと予言していました。その影響もあってのことかハドリアヌス帝は生涯、星に対する強い興味を持ち続けました。 一生に一度だけ、わたしはもっとも特筆…

📚ハドリアヌス帝の回想13ー 旅する皇帝

ハドリアヌス帝以前は、ローマ帝国の皇帝が帝国内を移動する機会は限られており、ネロのギリシア旅行が例外的にあったとしても、軍事上の必要性がある場合以外に皇帝がローマを離れることはあまりなかったようです。しかしハドリアヌス帝はこの慣習を打破し…

📚ハドリアヌス帝の回想12ー 食について

当時のローマの食習慣について、ハドリアヌス帝は皮肉も混じえて独自の見解を示しています。「過食はローマの悪徳」だとし、公式の食事は長々しく奢侈なものでしたが、ハドリアヌス帝は、 しかしローマ式饗宴にはつねづね嫌悪と倦怠でうんざりしていたので、…

📚ハドリアヌス帝の回想10ー 《力・正義・詩神》

古代ギリシア哲学の時代より説かれていた《真・善・美》という三つの概念。これに通じるものでしょうか。 現代の最上の精神のひとりであるニコメディアのアリアヌスは、古きテルパンドロスがスパルタ的理想を三語で定義した美しい詩句をわたしに好んで思い出…

📚ハドリアヌス帝の回想7ー 勇気とは

第一回目のダキア遠征における数々の武勲により、軍隊で栄光を勝ち得たハドリアヌスですが、そのときすでに彼は勇気の諸相について内省していました。 Celui qu'il me plairait de posséder toujours serait glacé, indifférent, pur de toute excitation ph…