📚ハドリアヌス帝の回想14ー 星空

ハドリアヌス帝の祖父マルリヌスは星占いを信じており、誕生時の星位から自分の孫が世界を支配するであろうと予言していました。その影響もあってのことかハドリアヌス帝は生涯、星に対する強い興味を持ち続けました。

一生に一度だけ、わたしはもっとも特筆すべきことをした。というのはまる一晩を星座に捧げたのだ。それはオスロエスとの会見の後、シリアの砂漠を横断しているときのことだった。何時間かのあいだ、人間くさい雑事を放念して、わたしはあおむけに横たわり、目をみひらいて、夕べから曙までこの炎と水晶の世界にわが身をゆだねたのだ。それはわたしのかずかずの旅のなかでもっとも美しい一夜であった。

Une fois dans ma vie, j'ai fait plus: j'ai offert aux constellations le sacrifice d'une nuit tout entière. Ce fut après ma visite à Osroès, durant a traversée du désert syrien. Couché sur le dos, les yeux bien ouvertes, abandonnant pour quelques heures tout souci humain, je me suis livré du soir à l'aube à ce monde de flamme et de cristal.

Marguerite Yourcenar, Mémoires d’Hadrien(『ハドリアヌス帝の回想』 多田智満子訳) 

 ところでときどきふと思うのですが、古典において西欧ではよく星のことが文学ほかいろいろなところに言及されるのですが、日本ではあまり星のことは聞かれず、もっぱら月について詠われていることが多いように思います。自分の教養不足のためでしょうか。いつか調べてみたいと思っています。